心海の砂煙

もう1個のほうが使えない時用

小鳥のさえずり

「そういえば、この本って禁術が書いてあるんだよね?」
「そうだよ?」
「その禁術って、具体的にはどんなものなのかな。」
「興味あるの?」
「…ううん。エレオノーアはね、禁術なんかに手を出してるモルフェくんはいつまでモルフェくんで居られるのかなあって思っただけ。」
「やっぱり興味あるんじゃん(笑)」
「だっだって!;
エレオノーアとは違って、成績優秀で、女の子からもモテて、まっまああんまり性格は良くないけど…あっなっなんでもないよ?;
とにかく、モルフェくんは幸せになれるのに、なんでそんな危ないことするんだろーって思ったから…;;」





エレオノーアね、思うの。
モルフェくんも例外なくエレオノーアを置いて卒業して行って、どこかに行っちゃうんだろうなって。
でも真っ暗なんじゃないかなとも思うんだよ。モルフェくんの行く先が、どこよりも暗くて人気がなくて、すごく冷たい所なんじゃないかって思う。君はそれを望んでるのかもしれないし、実際のところはわからないけど、エレオノーアはそれが悲しいんだ。
そう、すごく悲しいんだよ。
君からしたらそんなこともないかもしれないけど、エレオノーアにとってはこうやって話してるだけで十分特別な人なのに、そんな君がこの先どこともしれない場所に行き着くのは悲しいの。
間違ってるかもしれない、確証のない予想だけど、そう考えるだけで悲しいんだよ。
こんな禁術書、キャンバスに閉じ込めて無くしてしまいたいくらいなんだ。でもエレオノーアにはそんな資格が無いんだ。
君のことを悲しむ資格だってほんとは持ってないんだと思う。
だけど、だけどね。
死んだようなエレオノーアに、あの夜綺麗な夢をみせてくれたのは間違いなくモルフェくんで、あの時のエレオノーアは確かに生きてたんだよ。
君は、絶対にひとりになっちゃいけないんだと思った。もったいないし、たぶん君、独りでいるの向いてないよ。
君に近づくなって言われたことあるけど、君だったらもう一人の友達の方がよっぽど狂ってるや。大丈夫。
エレオノーアは君と話してたいんだよ。君と居たいんだよ。君のこと、大切に思ってたいし、君のことが知りたい。
おこがましいと思う。でも、願うんだよ。

「ねえ、将来きみは何になりますか。」

禁術書の真っ黒な表紙に雫がぽたぽたと染みを作った。